今回ご紹介する『名前のない病気』は、兄弟間の切っても切れない複雑な関係性を描いた作品です。
「30年間引きこもる兄」を持つ作者は、兄との距離を感じながらも、荒れた実家に彼を一人きりで放置し続けていることに罪悪感を抱いていました…。
最も身近にいる存在である「家族」とは何なのか。また、これまで作者が隠し続けていた存在の真実とは一体…?
漫画【名前のない病気 】基本情報
作者 | 宮川サトシ |
ジャンル | ホラー、ミステリー |
出版社 | 小学館 |
掲載誌 | ビッグコミックス 、ビッグスペリオール |
『名前のない病気』は、宮川サトシ先生による“自分の家族”を題材としたエッセイ漫画です。
この作品は、その人自身の“リアル”を描いた作品に贈られる「スペリオールドキュメントコミック大賞」で大賞を受賞しました。現在は「ビッグコミックスペリオール」で連載されています!
宮川先生はこれまでも家族をテーマにエッセイ漫画を出されており、代表作では実写映画化もされた「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」があります。
静かに迫りくる家族の問題…。重くのしかかる現実に考えさせられる作品です。
名前のない病気のあらすじを分かりやすく解説!
隠していた存在
漫画家で本作の主人公・サトシは、これまで自分の妻や子どもたち、親兄弟のことをエッセイ漫画として発表してきました。
しかし、そのエッセイの中で唯一登場させていない人物がいたのです…。それは、故郷である岐阜県の実家に暮らす長男の存在でした。
両親は他界し、荒れ果てた実家で30年間“引きこもり”の生活をしている長男。
今までは、彼の存在を隠すように漫画に登場させたことがありませんでしたが、「彼の引きこもりの原因は自身にある」と、本作は過去の出来事が赤裸々に描かれています。
断ち切れない記憶…
そんなある年明けの日、妻の実家の帰省に合わせて、サトシも2年ぶりに実家に顔を出すことに。
両親がいなくなったことで、すっかりゴミ屋敷と化してしまった実家…。そこに一人、長男がひっそりと暮らしていました。
2年ぶりの再会にも関わらず、何も変わらないどころか、サトシに対して悪態をつく長男。サトシは次第に呆れと怒りがこみあげてきました…。
そんな彼に、幼い頃の出来事が蘇ります。それは、事あるごとに台所の包丁で家族を脅していた長男の記憶で…。
名前のない病気を読んだ感想(ネタバレ注意)
赤裸々に語られた異様な真実
なかなかに壮絶な人生を送ってきたんだな…というのが、まず率直な感想です。現在の幸せな家庭生活からは、想像できなかったですね…。
共感まではいきませんが、作者がこれまで長男の存在を意図的に隠してきた意味が、少しわかるような気もします。
これまでのエッセイに登場させてきた父と母、そして次男との関わり方と比べてしまうと、やはり長男の存在は“異質”に感じてしまいますよね。
特に15歳も上のお兄さんと、幼い頃の生活がこんな風だなんて…。両親や次男がいなければ、もっとトラウマの記憶になっていたように感じます。
本作では、長男との関係をテーマに漫画を描くことに対する作者自身の“覚悟”のようなものが強く感じられました!
社会問題への新たな視点
社会的な問題が客観的ではなく、関係者側の視点から描かれており、当事者自身の背景や家族の苦悩がひしひしと伝わってきました。
“引きこもり問題”は現実でも問題にされているテーマですよね。しかし、ニュースではどうしても一般論や数字だけで語られがちな印象があります…。
作者自身の体験に基づいた描写は、問題の複雑さと深刻さを生々しく伝えるとともに、「家族」や「社会」の在り方、そしてその責任との向き合い方を深く考えさせられるようでした。
離れてもつながり続ける“縁”
“離れていても家族は家族”という言葉は、まさにこのような感じなのでしょうね。
理解できない長男との関わりを避けたい気持ちと、すっかり荒れ果てた実家に家族を放置する罪悪感の間で揺れ動き…。
静かに語られる物語の中で、作者の葛藤が痛いほど伝わってきました。
本作で描かれているこの関係性は極端な例かもしれませんが、「家族って本当に複雑で難しいものだな」と感じます。
タイトルにある『名前のない病気』というのは、この“家族”というものを、今後もずっと関わり続ける一種の“病気”に例えているように考えると、切ないような複雑な気持ちになりました…。
名前のない病気の見どころをご紹介
繊細かつ力強い描写!
宮川先生の繊細かつ力強い描写力が、本作の見どころの一つです!
これまでは自身の家族エッセイを、可愛くコミカルな作風で描かれていましたが、本作ではシリアスなタッチで家族の問題を描き出しています。
登場人物の表情や仕草だけではなく、背景が細部まで丁寧に描かれ、まるでその生活をリアルで覗いているような…、そんな感じさえしました!
普遍的なテーマの深掘り字
「家族」という生きる上で非常に身近で日常的なテーマを、作者自身の経験を通して深く掘り下げている点も見どころです!
親が亡くなった後も続く兄弟の問題…。30年もの間、社会との関わりを絶っている兄に対して、その繋がりを切れないのは家族ですよね…。
これまでは深く考えたことのない「“家族”って何だろう」と、感じるような作品でした。
【考察】名前のない病気の最終回結末
今まで避けていた長男との関係を赤裸々に描いた衝撃的な本作…。
単なる長男との複雑な関係を描いたもので終わるのではなく、作者自身の内面の成長や、社会への問いかけで締めくくられるのではないでしょうか。
サトシと長男の大人になってからの会話から、過去の出来事について詳細に描かれ、その背景にはどのような考えがあったのか、また再会するまで長男はどう生きてきたのか…。
ある種の答え合わせが展開されるような気もしますね。
ハッピーエンドで終わらないかもしれませんが、ほんの少しでも長男との関係の変化が描かれることを期待しています…。
まとめ
『名前のない病気』は、読んだ後も長く心に残る作品でした。
重いテーマですが、私たちの身近にある“家族”の闇を、作者自身の経験を通して掘り下げています。
サトシと長男の関係は?物語はどう決着がつくのでしょうか。続きが非常に気になる作品です!